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中国新聞「天風録」を読む
中国新聞(中国新聞社:本社広島市)の一面コラム(毎朝掲載)に、「天風録」(480字程度)があります。かなりの人気で、天風録書き写しノートが発売されているくらいです。「天風録」の文章を書き写すことによって、集中力、国語力、そして時事力を高めて、〈なりたい自分になるために、夢をかなえる力をつけよう〉(中国新聞社)というわけです。
2022年4月5日付け「天風録」を読むと、同紙では、前日(4月4日)から「用字用語の基本ルールを6年ぶりに一部で変更した」とあります。具体例として、以下の2点が挙げられています。
- 新)初心に返る←旧)初心に帰る
- 新)看板のかけ替え←旧)看板の掛け替え
6年ぶりの変更ということでピンときました。共同通信社『記者ハンドブック(新聞用字用語集)』(第14版)が、ちょうど6年ぶりで改訂版(2022年3月15日発行)を出したところだからです。中国新聞社も多くの報道機関と同様に、記者ハンドブックを一つの指標としながら独自の用字用語を整備しているはずです。
記者ハンドブック(第14版)の「まえがき」には、次のような一文があります。「今回の改訂では、使い分けに迷う「異字同訓」の一部漢字の平仮名使用を拡大して用例を整理したほか、語義、注釈も見直して使いやすさを意識しました」。
初心に返る
上記の「語義、注釈も見直して」に当たる変更と考えてよいのでしょう。
記者ハンドブック(第14版)を見ると、「かえす・かえる」の項に、「初心に返る」が載っています。同(第13版)では、同じく「かえす・かえる」の項に、「初心に帰る」となっています。それぞれの具体的な説明は、以下のとおりです。
- 第14版:返〔主に事物が戻る〕、〔元の持ち主や元の状態などに戻る〕「初心に返る」
- 第13版:帰〔主に人に〕初心に帰る
看板のかけ替え
上記の「使い分けに迷う「異字同訓」の一部漢字の平仮名使用を拡大して用例を整理した」に当たる変更のようです。
記者ハンドブック(第14版)には、「かかる・かける」の項に、「額をかけ替える」の用例が載っています。
- 第14版:掛〔一般用語〕、〔注〕「引っかかる、及ぶ、作用する」など幅広い語義で使われる。漢字書きで問題ないが、慣用で平仮名書きを広く用いる。「額をかけ替える」など
そのほか、第13版の「襲い掛かる、通り掛かる、取り掛かる、押し掛ける」などの「掛かる」あるいは「掛ける」が、第14版では、平仮名書きで、「かかる」あるいは「かける」となっています。つまり、第13版で〔慣用で平仮名書き〕とされていたグループに、第14版では、かなりの用例が新たに付け替えられています。
記者ハンドブック(第13版)では、「かかる」と「かける」の2つの項に分けていたのが、第14版では「かかる・かける」の項一つになってすっきりした形になっています。ただし、全体としての用例の数はその分少なくなっているので、第13版を参考にしながら、第14版の趣旨に沿って自分なりの用字用語を整理し直すとよいかもしれません。
もちろん、第14版でも「漢字書きで問題ない」としているのであり、要は自分用の用字用語を統一して、文章全体を読みやすく、しかも分かりやすいものにすることが大切になります。